【まとめ・要約】苦しかったときの話をしようか/盛岡 毅
「苦しかったときの話をしようか/森岡 毅」
私の大好きな戦略家・マーケターである森岡毅さん。
この本は娘たちのために、自分の中の知識と経験を盛り込んでプライベートで書いたものが結構生々しく描かれている。
それでいて、娘を思う気持ちが伝わってくる感動のビジネス書になっています。
子供の成功を願う父親の執念の一冊。
その要約を書き留めておきます。
第1章 やりたい事がわからなくて悩む君へ
成功は必ず人の強みによって生み出されるのであって、決して弱みからは生まれない。
問題の本質は外ではなく、君の内側にあるのだ。
就職のサイコロを振るこのタイミングまでに、自分自身を知るための努力を十分に行ってこなかったことに起因している。
自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。
人はそれぞれ強みを持っている。その宝物を探しなさいと。
不正解を掴まずに正解だけを掴めば良いと。
では、不正解とは何か?これを森岡さんは“自分にとって決定的に向いていない仕事に就いてしまう事”と言っています。
その中で正解は沢山ある。むしろ数少ない不正解があるだけで、それ以外は全てが正解だと。
肩の力を抜いて、自己分析をしっかりして軸が明確なら、ほとんどの不幸は回避する事が出来ると。
そして、章の終わりにはこう締めくくっています。
つまり沢山ある小吉や吉を1つ引っ張ってくるだけで十分なのだよ。
どんな会社に入っても自分の弱みは多少は露見するし、失敗もするし、ライバルもいれば嫌な人間も必ずいるものだ。
そんな中で、君は負けても転んでも起き上がってへこたれずにひたすら自分の宝物を磨き続けられるか?
その覚悟こそが問われている。
大吉かどうかを決めるのは会社ではない、入社後の君自身なのだ。
第2章 学校では教えてくれない世界の秘密
資本主義の本質
分かりやすくいうと、資本主義社会とは、サラリーマンを働かせて、資本家が儲かる構造のことだ。
他人の24時間を使って稼ぐ人と、自分の24時間を使って稼ぐ人。その2種類の人間しかいない。
しかし、全員が疑いもなくサラリーマンを喜んでやっているのはなぜか?
これこそがパースペクティブの差であり、その限界だ。人間は自分が知っている世界の外を認識する事ができない。
覚えておいたほうが良い。資本主義とは、無知であることと、愚かであることに罰金を科す社会のことである。
日本の教育システムも、大量の優秀なサラリーマン(労働者)を生産するように作られている。
良い成績をとって、良い大学を出て。大きな会社に入って、安定した生活を送る、それが幸せな成功者の目指す道だと。昭和の高度経済成長期の“呪い”はまだ色濃く残っている。
遅刻はしない、出された宿題は期日までにする、周囲と仲良くするなど、小さい頃から学校で叩き込まれるそれらの“美徳”を育む習慣は、「規律ある優秀な歯車」をつくるのに実に都合がいい。部活動でさえ、先輩を過度に敬って、理不尽に対する免疫力を上げて、将来の上司に従うための忍耐力のトレーニングをしているようなものだ。
少し、意味合いは異なりますが、 先日ホリエモンも似たようなことを(いや、もっと遠慮のない過激な発言)言っていましたね。
「小学校は刑務所通わされてるようなもん」だと。
自分も小学生の子供がいるが、よく似たようなことを思う。本当に意味のない宿題が出されたり(字の汚い先生が作った漢字練習のプリントはその汚い字の上をなぞるwww)することも。
もう昔とは時代が違う。ホリエモンも警笛を鳴らしてますね。現代の学校教育は時代にあっていない部分も少なからずはあるんではないかと身をもって感じる時も少なからずあります。(しかし、教育現場に携わっている人達は沢山の子供達の為に日々奮闘しています。私達には到底理解が出来ないであろう課題や問題を現場で120%解決しようと努力しているはずです。この問題は単に、“小学校は刑務所のようなもん”などという発言を影響力のある方がする事は決して正しいとは思いません。)
この世界は平等ではなく、資本家のために都合よく構造が作られているということを私たちは理解しないと日本は本当に危ないでしょう。
理解した上での選択と、知らないままでの選択とでは訳が違う。
名刺の肩書きを自慢して生きている人がこれほど多い現実を見ると、資本家の作った階層ピラミッドがいかに人間の本質を巧妙に衝いているかを思い知らされる。
ここにはなんども頷きました。
階層ピラミッドの上位に立つために、資本家の元で必死に頑張っているのが私たちなんですよね。世の中は本当によく作られていますwww
しかし、森岡さんはサラリーマンの人生を否定しているわけではありません。表面的なことを言ってるのではなく、日本を変えていこうというとてつもない大きなビジョンがある上でそれを伝えています。
サラリーマンの外に資本家の世界があることを知った上で、自分を活かす機会にアンテナを張れる人であってほしい。
肝心なのは資本家の世界を射程圏に見据える、パースペクティブを君が持っているかどうかだ。
第3章 自分の強みをどう知るか
“強み”は必ず好きなことの中にある
ここでは自分の好きなことを書き出して、そこから自分の“特徴”や“強み”を探す方法を紹介しています。
自分が“好きなこと”こそ自分の特徴が強みとしてすでに発揮されている可能性が極めて高いからだそう。
注意すべき点は、必ず動詞であること。
「バッグが好き」とか「車が好き」とかそういった名詞はここでは必要ありません。
今まで自分が好きだった「~すること」という文脈を実際に書き出す方法。
ちなみに集まるものはだんだん似通って重複していくが気にしなくていいとのこと。
「運動会の騎馬戦で勝つ作戦を考える」と「部活で試合に勝ち抜く作戦を考える」は両方とも似通っているがそのまま別のポストイットに書き出していきます。
<手順>
1.大量のポストイットを用意し、1枚に対して1つの動詞を一つ書き出す。
2.A4程度の紙などの右上にそれぞれ「T」、「L」、「C」、「その他」と明記しておく。
3.最低50個、できれば100個くらいの行動を動詞で書き出してみる。
4.それを先ほど用意した4枚の紙に集約と仕分けをしていく。
※森岡さんはここで、もし動詞が50個も書けないのであれば自分のことをよく知っている家族や友人に「自分が生き生きとやっていることは何?」と聞いてみることを勧めています。
あと、これは私の独自の方法ですが、『メモの魔力/前田裕二(幻冬舎)』の最後の巻末の自己分析の質問に答えるのもオススメです。
幼少期からの自分を振り返ることで、自分の好きだったことをいくつも見つける事が出来ました。
ちなみに、今回このブログを始めたのも、幼少期から原稿用紙が毎回はみ出てしまうほど作文を書いていたことを思い出したから。幼少期からの自分を振り返らなかったら、この先も「文字を書く事が好き」という事を思い出すこともなかったし、気付くこともなかったことと思います。
さて、動詞を50個以上書き出す事ができたら、基礎能力の3分類「T、L、C」に仕分けをしていきます。
T:Thinking
<好きなこと>
考えること、問題を解くこと、人と議論をすること、勝つための作戦を考えること、計算すること、勉強すること、研究すること、分析すること、知ること、予想をあてること
<特徴的な趣味>
戦略系ゲーム、将棋、チェス、囲碁、読書、プログラミング など
<向いている職種>
ファイナンス、コンサルタント、研究職、各種の士業、アナリスト、マーケティング、企画系
C:Communication
<好きなこと>
友達が増えること、人と会うこと、話すこと、話を聞くこと、SNSで多くの人と繋がること、人が集まるところに参加すること、人に人を紹介すること、オシャレを楽しむこと
<特徴的な趣味>
SNS、パーティーやゴルフ、旅行などのイベント、ファッション、グルメ情報
<向いている職種>
プロデューサー業、営業職全般、PR/広報、交渉人、広告代理店、ジャーナリスト、政治家
L:Leadership
<好きなこと>
何かを達成すること、目的を定めて挑戦すること、仕切ること、変化を起こすこと、自分で決めること、人を引っ張っていくこと、責任ある役割を担うこと、人の世話を焼くこと
<特徴的な趣味>
ランニング、ジム通い、トライアスロン、ストイックなもの
<向いている職種>
管理職、経営者、プロジェクトマネージャー、プロデューサー、研究開発リーダー
そして職能を積める戦場へ進め!
ナスビがナスビだとわかっていることは非常に大切だが、実はそれが一番難しいのだ。
人のことは比較的よくわかる。
でも自分がナスビなのか、トマトなのか、きゅうりなのか、玉ねぎなのか、そもそも何を目指すのか、何がしたいのか、そういうことが全くボンヤリしたまま二十数年を過ごしてしまうのが典型的な日本人で、私が君の年齢の時もそうだった。
昭和の時代ならばレールが“はっきり”していて“しっかり”していたからそれで良い。
皆で勉強して、皆で偏差値の高い大学を目指して、皆で一流の大きな会社に入って、皆で一生懸命働いて、そうすれば皆を会社が一生面倒見てくれる。
かつての日本では“個”の覚醒など要らなかったのだ。
しかし今はそんな時代ではない。
一旦レールが見えなくなると、古い意識と社会システムから抜け出せず、世界との競争で日本は成長なき「空白の30年間」を停滞してきた。
この30年間で日本がどれだけ貧しくなったか想像してほしい。
ゆとり教育を否定した大人は、今の大人の方がよほどの“ゆとり”に浸かろうとしている自堕落な風潮を反省すべきだ。
戦略なきキャリアが問題である。
まずは己を知り、自分の特徴を生かせるたくさんの正解から1つの職能を選べ。
自分がナスビなら立派なナスビへ、キュウリなら立派なキュウリになるように、ひたすら努力を積み重ねれば良いのだ。
第4章 自分をマーケティングせよ!
この章では森岡さんがあのUSJを劇的に変化させたマーケティング手法でも良く用いている一部のマーケティング手法を使って自分をマーケティングし、分析し、ブランディングする方法を説明しています。
どうしてもこのブログの文章だけではとても伝え切れる内容ではないのが事実ですが、大まかにだけ説明していきます。
攻略する市場:全ての選択肢の中から“戦場”を規定する
これは企業で考えるとブランドが参入する市場を規定することです。
例えば、
銀行は「金融市場』
映画館やテーマパークは「エンターテイメント市場」
といった具合に。
ブランドの戦う場所を規定する意味は、規定しない場合と比べると分かりやすい。
どこで戦うかを定めないまま、広くいろんな場所に経営資源をばら撒き、どの戦場でも戦力が勝てるラインに満たないため、勝つことが出来なくなる。
また、市場がそもそも狭すぎて、生き残るための売り上げがそもそも市場に存在しないといったことも。
したがって、戦場の設定は目的と自身の経営資源に照らして、広すぎず、狭すぎずが基本となります。
この考え方をキャリアに置き換えて考えると、自身が自分をブランディングする上で、どこで誰を相手にするのかを決める必要があります。
第3章で自分の強みをあぶりだしたところで、この戦う場所を規定してみましょう。
ここで必要になるのは「軸」です。
1.WHO:誰に
戦略ターゲット(ST):自分自身が選ばれる確率を高めるために経営資源を投下する広いくくりのこと。
コアターゲット(CT):戦略ターゲットの中で更にターゲットを絞り、集中して予算を投下するより狭いくくりのことを意味する。
キャリア戦略においてはSTは採用時の場合などは、自分との接点を持つ可能性のある人たち全てが当てはまる。
CTはその中でも直接的に採用を左右する面接官である。
2.WHAT:何を
WHATはブランドの“価値”を規定する。購買者がそのブランドを買う本質的な理由だ。
ビジネスでいうところの「便益」ベネフィットだ。
私個人的にはこの部分を考えるのがとても楽しい!!
仕事が飲食市場なので、消費者が欲しがっているものの本質を考えるために私自身も必死に消費者理解に努めてきました。
有名な言葉に“消費者が求めているのはドリルではなく、ドリルであける穴だ”という言葉も存在しますが、簡単そうで実は奥が深い(笑)
映画館に行く人は、単に映画だけが好きな人もなかにはいるでしょうが、本当は大切な人と過ごす時間だったり、一緒に観た人との共感だったり。
ディズニーランドに行く人は“アトラクションに乗りにきた”訳ではなく、パーク内の出来事やアトラクションを通して素晴らしい体験ができることへの“期待”と“感動”を得るためにお金を払っている。
そういった消費者のインサイトを探っていくことの楽しさは半端ないものがあります!(笑)
話がそれましたが、ここでいうWHATは自身のブランドの本質的な価値のことを言っています。
相手の企業が、自分自身を買ってもらえる理由。
自身の強みや資格など、客観的に“便益”を信じさせる根拠。
自分の実績や経験。
3.HOW:どうやって
HOWは便益を提供するための手段のこと。
ビジネスで言うところの“ドリル”の部分。
ブロダクト(製品)や、映画館の作品、ディズニーのアトラクションも全てHOWに該当します。
このキャリア戦略に置き換えた時には、面接官に自分の“便益”(自分自身を買ってもらう理由)を届けるための具体的な手段や仕組みのことになるでしょうか。
この章に関しては文脈で説明するのがすごく難しい。。
是非本を読んでみることをお勧めします!!!
第5章 苦しかったときの話をしようか
人はどういうときに最も苦しいのか
働いて働いて、死ぬほど忙しい時では決してない。
会社や上司や周囲の評価が厳しい時は、辛いのは間違いないけれども、それも最も苦しい時ではない。人が最も苦しいのは、
「自己評価が極端に低くなっているとき。自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたときだ。」
ここからは、森岡さん自身がそんな自己評価が極限にまで下がった時期があったことを明かし、その苦悩の先に現在があること。
また、自分の娘たちが船出していく前に、順風満帆から程遠いであろう現実に向き合ったときに、その話が準備運動になればいいとの思いからこの章が始まる。
君からは好きなことばかりやってなんでも実現してきたように見える私にも、キャリアの途上で情けないことや惨めなことはたくさんあった。しかし、
『きっと、なんとかなる」ことを覚えておいて欲しい。
私だけではない、一人一人が似たり寄ったりの苦しさと向き合って、それでもなんとか生きてきたことを、そしてたいていの人がハッピーになれたことを忘れてはいけない。
苦しい時ほどそのことを忘れてしまうから、そういうときにこそ想い出して欲しい。
そして、自身の数々の苦悩と、米国P&G時代での理不尽な出来事を踏まえて、それでも困難に立ち向かおうとする。もうこの時点で物語にかなり入り込んで目が大きくなったり、眉間にシワが寄ったり、首を横に振ったり(オーマイガー的な)、大きなため息をついたりしながら、読み進めている私がいる。
ここで逃げたら、今まで自分の中で大切にしてきた何かが壊れる気がした。
二度と立ち上がれない気がした。
迷った時は厳しい方を取れ!
人間の脳は楽な方がよく見えるように常にバイアスをかけている。
だから「迷ったらハードな道が正解だ。」
そして、米国での成功を掴み取ると、全ての状況がうまく回り出す。
強い人間は、環境に合わせて自分を変えるか、自分に合わせて環境を変えるか、そのどちらかができる。
自分にとって安全でストレスの少ない道を選び続ける人は、運が良ければ幸せにはなれるだろうが、それでは決して強くはなれない。
100の自分に対して常に120や130の負荷をかける挑戦を、君にも意識していて欲しいと願う。
第6章 自分の弱さとどう向き合うのか?
不安と向き合うには?
最後の章に、不安について深く掘り下げます。
不安なのは挑戦している証拠であり、また不安とは自己保存の機能で、自己保存の本能に逆らうことにより起こるものだと。
挑戦する「勇敢さ」と「知性」が強ければ強いほどよりはっきりと現れるのが不安の正体なのだそう。
真剣に考えて欲しい。「何も失敗しなかった人生…」。
死ぬ寸前に自分がそう呟いて天寿を全うする場面を想像して欲しい。
何も失敗しなかったことは、何も挑戦しなかったに等しい。
失敗しない人生そのものが、最悪の大失敗ではないのか?
心の中の「不安」に住民権を与えて、「不安」の居場所を認めてあげよう。
「挑戦している証拠だ!」と喜ぼう。不安でいいのだから。
そうやって適度な不安と常に共存する人生こそが成長し続ける人生であり、君が他の誰でもない立派な君になるための人生だ。
君が君を磨き続ける限りにおいて、“不安”が一生消えることはない。
結局すべての人は、己が主人公の人生をそれぞれ生きている
君にはいつか必ず仲間ができるのだから、広く薄く錯覚でつながる友達なんかいらない。
友達がいないとかできないとか、うまくいかないとか、そんなことにこだわらなくてもいいのだ。
一生懸命お互いに気を遣って“友達ごっこ”をしても、そもそも目的が違うのに利害を調整するなんて最初から“無理ゲー”なのだ。
そんなことに気を煩わせる暇があるならば、むしろ早く君は自分のやりたいことを探してそれに夢中になれ!
友達はいなくてもいい。目的を追求するなら、君にもいつかきっと、手を取り合って同じ目的に向かう本当の「仲間」ができるだろう。
まとめ
森岡さんの今までの人生の集大成とでもいうんでしょうか。森岡さんの本にはところどころに激しい戦を生き抜いてきたエピソードが盛り込まれてますが、だんだん詳しくなってきているようで楽しい!
「苦しかったときの話をしようか」は、そんな戦場をくぐり抜けてきた父親が、娘たちに向けて書き綴ったプライベートな『虎の巻』が元になった本だそうです。
子供達がキャリア判断に困った時に役に立つようにと。
私は初めてビジネス書で涙をながしました。(笑)
森岡さんの情熱、そして娘さんに対する愛情がものすごく伝わってきました。
あんなにすごい人でも、やっぱり一人の父親であり人間であると。(笑)
すごく身近に感じることが出来ました。
完璧なキャリアを気づいてきた1人者のようですが、自己否定したり、ありえないような理不尽な状況におかれたり、苦しかった自身の体験談も。
その苦境を乗り越えて、今があるんですね。
本当にみなさんに是非、読んで頂きたい1冊です。
最後まで、読んでいただきありがとうございました!!